【導入事例】清水建設様 -建設現場排水流量検知ソリューション

センスウェイの流量検知ソリューションを導入いただいた清水建設様にお話を伺いました。

エンジニアリング事業本部 情報ソリューション事業部 河野 秀明(こうの ひであき)様

総合ビル管理システムを一気通貫で提供する清水建設

―まず、河野さんの部署の位置づけとご自身の役割について簡単に教えていただけますか。

エンジニアリング事業本部に所属しています。当本部は建設業の本流である建物を建てること以外のことを行う部門で、製造ライン、土壌、新エネルギー、情報ソリューションの4つの部署に分かれております。私が所属する情報ソリューション事業部は、ビルの運用に深く関わる、運用設備、カメラ、中央監視、サイネージ等の情報設備についての提案・設計・施工・保守までを扱っています。また、昨今ではAI・IoTを活用した工場の検品システム等の新規システム開発も行っています。その中でも私は新築案件での設計や仕様決めを行う傍ら、新技術の開発も担当しています。

―なるほど。その中で今回の下水流量検知はどのような位置づけなのでしょうか。

当社では、「BECSS」という総合ビル管理システムを開発。メーカーとして設計・施工・保守までおこなっています。ゼネコンの中でも自社で中央監視設備を保有し、提供している企業は少ないのではないかと思います。

BECSS(総合ビル管理システム)
https://www.shimz.co.jp/solution/tech172/index.html

本来新築のビルへの導入が多い「BECSS」ですが、2018年にサーバーをクラウドに移行した「BECSSクラウド」をリリースし、今回はその技術を仮設の建設現場に転用しています。流量検知したセンサーデータをセンスウェイさんの「SenseWay Mission Connect(センスウェイ ミッションコネクト)」経由でシステムに接続しています。

-今回のシステムご提供までの経緯を教えていただけますか。

以前倉庫での火災早期検知を目的としてLoRaWANデバイスを検討したことがありセンスウェイさんに相談していました。2018年のことです。その後今の建設現場の担当になったときに下水道排水の課題が発生。ホームページでセンスウェイさんが流量検知のセンサーを持っていることを知って2020年に再度コンタクトさせていただきました。

年間数千万円になる現場排水料金の適正化を図りたい

―流量検知センサーを使用されているのはどのような現場ですか。またどのような課題感からセンサーが必要になったのでしょう。

都市部の超高層ビル建設現場です。都市部の高層建築の場合地下階が多い傾向にあり、地下深く掘って工事を進める必要があります。ここで問題となるのは、場所によっては地下を掘り進めていくと大量の湧水が沸いてくることです。工事を適切に進めるためには、この地下水を日々排出する必要があります。地下水は東京都の下水道へ排水しています。この下水道処理料金が1立米あたり345円かかります(記事掲載時点)。都心部のある現場では、月間220万円程度のコストがかかっています。年間換算では2,500万円くらいになりますから相当な負担です。

そのため少しでも下水道料金を減らしたい。排水量を適切に管理したいという要望がありました。それにはまず日々の流量の把握が重要です。日々確認していないと、下水道局からの請求が月末に来た段階でやっと今月の排出量がわかるという状態になります。これでは適切な管理はできません。そのため大きな現場では下水道局への排出量を担当者が毎日メーターをみて手作業で転記して報告する作業が発生していました。これを省人化したいというのが発端です。

システム構成

LoRaWANで構築した遠距離、低コストのネットワーク網

―実際に排水流量検知ソリューションを利用してみていかがでしたか。

はじめは検証用のデバイスを借りて現場で接続検証をおこないました。建設現場は電波が届きづらい場所も多いのですが、LoRaWANを使ったセンスウェイさんの電波網のおかげでセンサーデバイスは問題なく電波を拾ってくれました。建設現場は日々動いています。デバイスを設置する場所を頻繁に変える必要があるのですが、無線式かつ電池式デバイスのため設置場所に限らず使用できています。

同じことを携帯網で実現しようとすると、すべてのデバイスにSIMを持たせる必要があります。LoRaWANを利用することで、長距離通信可能かつ低コストのネットワーク環境を実現することができました。また、「SenseWay Mission Connect」はクラウドで構築されており、現地~クラウド間の通信を検討する必要がなく、導入も簡単でした。

netvox R718H(パルス検出),R718KA(4-20mA検出) 
センサ設置用BOX

-導入前にあった課題は解決できましたか。

はい。まず担当者毎日メーターを読みにいく手間が減り省人化になりました。また、これまではメーターを読んでいる担当者しか流量がわからなかった。今回はセンサーデータを管理システムと連携していますので、管理サイトからデータをパッと見ることができます。そのため、現場の担当者だけでなく、工事長、システム管理者、地下水専門部署など関係者が各自データをリアルタイムで確認し、その場で判断を下すことができるようになりました。

システム画面イメージ

-下水流量検知について今後検討されていることはありますか。

今回のシステムはまずは下水流量を把握することを目指していました。今は次の段階として検知したデータを元に現場のポンプを制御しようとしています。現在は制御信号を飛ばすためにSIMを利用しています。つまり、LoRaWANと携帯網の2つが併存している状態です。これは、できれば一元化を目指したいと思っています。ただし、現在は都内数件の工事現場だけで利用していますが、今後は他の現場での横展開も考えています。そのとき設置場所や電波の状況などは現場によって大きく変わってくる可能性が高い。そのため低コストに構築できでデータ収集が得意なLoRaWANとコストがかかるが双方向通信での制御もできるSIM携帯網を適材適所で使い分けていく必要がありそうです。

熱中症対策や高齢者安全管理の必要性が高まる

-今後センスウェイに期待することがあればお聞かせ下さい。

今回のシステムを構築するうえでセンスウェイさんはセンサーを納品。取り付け、結線などの作業は清水建設がおこないました。今後はセンサーの納品だけでなく取り付けなど施工の部分まで含めてトータルでお願いできるとありがたいです。

また排水流量検知とは別件ですが、近年熱中症対策や高齢者作業者の体調管理、安全管理の必要性が高まっています。現場作業者の心拍数測定、GPS、トラッカーの機能があるワーカーコネクト(Worker Connect)は検討したいと思っています。同様なソリューションは他にもあるのですが、毎日充電が必要であったり重すぎたりと現場作業の負担が大きいものが多いのです。