LoRaWAN®はなぜ建設現場のDXに有効なのかを解説

建設現場のDXにはIoTセンサーが欠かせない

近年、建設業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が話題に挙がるようになってきました。DXとは、進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるというコンセプトです。
建設現場のDX実現にあたっては建設現場の状況をデータ化する為にIoTの活用が必須で、インターネットと通信できるセンサーを複数設置してセンサーネットワークを構成し、運用していく必要があります。
従来の建設現場はさまざまな課題があり、特に屋外の広大な工事現場への設置は非現実的とされてきました。しかしながら、近年ではIoTに特化した通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)の普及により低コスト・低消費電力の通信の仕組みが確立され、これらの課題は解決に向かっています。なかでも自由度が高い通信規格であり、センサー参入メーカが多い「LoRaWAN」は注目を浴びています。
センスウェイも創業当初からLoRaWANに注目し様々な実証実験を行ってきました。

今回は、LoRaWANはなぜ建設現場のDX-工事現場でのセンサー活用-に有効なのかをお伝えしていきます。

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センサー設置に関する従来の工事現場の課題

従来の工事現場においては下記の様々な課題があり、センサーの設置ニーズがあっても導入できませんでした。

  • 無線で通信をするセンサーの消費電力が大きく設置に配線工事が伴うので、電源配線の環境が整っていない建設中のビルや広大な土木現場では設置が難しい
  • 工事現場は広大になることもあるが、現場を網羅する無線通信網を構築する為には従来のWIFIやBLEといった無線通信の距離が短く通信機器(ゲートウェイ)の数がかさみ、初期費用、ランニング費用ともにコストがかかる
  • 工事現場には様々な無線が飛び交いノイズや接続数の問題で安定的な通信ができない
  • センサーの設定においてWIFI設定作業などが煩雑

昨今の建設業界では、上記課題が解決できるLPWA(省電力長距離通信)のLoRaWANが注目されていて、建設現場のDX実現が現実味を帯びています。

LoRaWANとは

画像:ローラワンロゴ

LoRaWANとは、LPWAの一種で「LoRa Alliance®」が定めた「無線ネットワーク規格」の名称です。IoT向けの通信規格で、仕様は公開され、世界中のさまざまな企業が既に利用中です。LoRaという名前は、低消費電力で遠くまで通信できることから「長距離」という意味の「Long Range」に由来しています。
LoRaWANは、この「LoRa」の変調方式を採用したネットワーク規格で、「WAN」の部分は「Wide Area Network」の略称です。全て繋げると「Long Range Wide Area Network」になり、直訳で「長距離広域ネットワーク」となります。

LoRaWANの特徴

LoRaWANには、下記のような特徴があります。

  • 低電力・省電力でセンサーが通信できる
  • Wi-Fi、BLEと比べて圧倒的に電波の回り込み特性がよく、障害物があっても長距離通信ができる
  • 他の無線ネットワークが存在する環境下でも干渉せず安定した通信できる
  • 多くのLPWAはセンサーからのデータ送信(アップリンク)は10byte前後となるがLoRaWANは最大で「242byte」と柔軟な設定ができる
  • センサーのデータ受信について回数の制限がなく、これらのことかLPWAの中で最も柔軟な設定ができる
  • LoRaWANはライセンス不要のアンライセンスバンド(特定小電力無線、またはISMバンド等とも呼ぶ)で、Sub-GHz(サブギガヘルツ)帯と呼ばれる920MHz帯を使用

これらの特徴から、広大な建設現場においても問題なく使用できることがわかります。LoRaWANについての詳細は「LoRaWAN🄬とは?」の記事をご覧ください。


LoRaWANを工事現場に設置するメリット

LoRaWANを工事現場に設置できると、主に4つのメリットがあります。そのメリットを一つずつみていきましょう。

長距離通信で広い工事現場でも通信の網羅が可能

画像:長距離通信

工事現場は一般的に面積が数十キロ規模になることもあり、広大な範囲のカバーが必要です。従来の無線通信技術では通信距離が狭く、広大な屋外への設置は現実的ではありません。
しかしLoRaWANであれば、他通信技術と比べて通信距離が長いため、非常に広範囲をカバーできます。ゲートウェイも少なくて済むため運用が簡単です。

電源配線不要なセンサーで現場が変わっても容易な設置変更

画像:電源不要センサー

従来のセンサーは電源が必要なこともあり、設置変更には各種導入工事が必要でした。LoRaWANであれば、センサーは電池で駆動するセンサーが多いため設置や場所変更も簡単です。また現場でネットワーク設定を施す必要もありません。このことから建設現場など頻繁に移設が必要なシーンでも問題なく対応できます。

他の無線と干渉しない電波

画像:干渉しない通信

LoRaWANの920MHzはSub-GHz(サブギガヘルツ)帯なので、他の通信と干渉しにくいことが大きなメリットです。工事現場で4G-LTEやWi-Fi、Bluetoothなど多種多様な電波やノイズが飛び交っていても、干渉を受けずに安定して通信できます。

センシングデータのクラウド蓄積により、巡回にかかる工数が減らせる

画像:クラウド蓄積

LoRaWANセンサーを設置することでクラウドにセンサーで取得したデータをアップロードできるようになり、巡回点検をする手間を減らせます。
従来は特に危険箇所や物が多い箇所などで点検の手間がかかっていましたが、センサーを置くことで、これらの点検作業の効率化が可能になりました。巡回の工数を減らすとともに事故が発生する可能性も抑えられ、かつ数分に1回などのデータ取得により早期に異常を発見することも可能になっています。

LoRaWANが実際の工事現場に使われた事例

すでにLoRaWANは工事現場に多く導入されていて、センスウェイでも多数の事例があります。ここでは、その事例を順番にみていきましょう。

ロックフィルダム建設現場での活用

ダム建設現場での水位モニタリングと環境モニタリングにLoRaWANが活用されました。
建設現場において、基地局から原石山までは1.5km、ダムまでは200m、事務所までは300mありましたが問題なく通信できています。
この実証実験では水位センサーや環境センサーだけでなく広範囲の作業者の動態を把握する為、GPSトラッカーを使った位置把握の取得なども実証しました。

水位センサー

熱中症予防ソリューションの共同実証

LoRaWANとWBGTセンサノードを採用して、熱中症予防ソリューションの実証を行いました。実証にあたっては、センサーに搭載されているJIS規格に準拠したWBGTセンサーによってデータの計測から送受信までを完全に自立稼働させています。
センサーから送信されたデータをもとに、クラウド上でのグラフによる見える化や設定した閾値を超過した際に携帯端末への音声・メール通知を行うアラート機能を実現しました。

熱中症対策ソリューション -WBGTによる建設現場安全管理

近年、地球温暖化による気温上昇に伴って、注意喚起を呼び掛けられる機会が増えた「熱中症」。気温の高い夏の時期には、熱中症が集中して発生することが多いです。

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バイタルセンシングソリューションの活用

バイタルセンサーを用いて、建設現場や工場施設内で働く作業員の精密な体調管理をするなど、実効性の高い現場管理サービスを提供しています。特に転倒検知が非常に好評です。作業員の安全確保のソリューションとして多くの現場で使われています。

ワーカーコネクト -IoTで現場作業員の熱中症リスク・転倒を検知

近年、地球温暖化によって日本の平均気温は上昇を続けています。熱中症患者数は増加傾向にあり、気温の高い夏の時期には「熱中症」が集中して発生しています。

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山間部の環境を測定して雪上車の効率的稼働や路面凍結予測に活用

雪に閉ざされる群馬県の山間部における路面凍結・雪上車の効率的な稼働を目指すIoTプロジェクトにてLoRaWANが採用されています。 IoTセンサーを用いて現場の気温や湿度、風速などを路面の凍結予測や積雪状況可視化に活用し、運転者への注意喚起や雪上車の稼働要否判断に使用しています。

その他LoRaWANの工事現場ソリューション

画像:建築ソリューション一覧

LoRaWANを活用して効率のよい工事現場管理を

写真:建設現場作業員風景

センスウェイのLoRaWANを使用すれば広大な工事現場でも問題なく通信できるため、現場環境、作業員の健康状態などの可視化が可能です。LoRaWANを活用して建設現場のDXを実現し、効率のよい工事現場管理をしていきましょう。